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もうラスト1週間でしたが、家からチャリで15分程度のところにある「横手市増田まんが美術館」にて開催中の「鬼灯の冷徹原画展」に行ってきました。
この展覧会は、現在週刊モーニングにて連載中の江口夏実さんの「鬼灯の冷徹」の生原稿や単行本の表紙に使用されたカラーイラストなど計189点もの原画が展示されるというもの。主催はなんと横手市教育委員会。絶対委員の中にファンいるだろ。
2014年10月26日
「アジアマンガフェス」アジアマンガフォーラム開催
海外参加漫画家と秋田県出身漫画家(矢口高雄氏、高橋よしひろ氏、倉田よしみ氏、きくち正太氏)をパネラーとしたマンガフォーラム。
それぞれの国から見た各国のマンガ文化に対する印象などを意見交換するほか、国際的な広がりを見せる「MANGA」の可能性について話し合います。フォーラム終了後には、合同サイン会も予定しています。
時間:午後1時30分から~午後4時
場所:1階大研修室
参加条件:整理券をお持ちの方(当日午前9時から配布)先着80名様
以上美術館&市役所のサイトより抜粋。
プロ漫画家(しかも超有名&大御所)が一般来場者相手に似顔絵を描くとか一体何なんでしょうか。一番意味不明なのは有名漫画家がわざわざ秋田県横手市なんてクソ田舎に来て絵を描くわけでもなく個別サイン会をするでもなくカレーを作って販売する「土山しげるのまかないカレー販売」です。
「ジャ●カレーのルー」wwwwwwwww 発表当初から値下げされてるし。
ガチでカレーを販売する土山先生。
こんなの。味は勿論美味しかったです。そもそもイベントメシで200円なんてあり得ない安さ。天気の良さも相まって、美術館内のカフェコーナーやあらかじめ用意されていたテントではなく駐車場の地べたに座って食べている人も何人かいました。
ちなみに本タイアップイベントでは秋田市にある国際教養大学の学生(留学生含む)も飲食ブースのスタッフとして参加していました。産官学連携ってやつですね。そのせいかポップも日英2カ国語表記。飲み物の無料配布のみならずリンゴの喰い放題までやるのがご当地ならでは。
午後からは展覧会に出品している中国・香港・台湾・韓国・マレーシアの漫画家と秋田県出身の漫画家のパネルディズカッションが行われました。通訳担当は国際教養大学の先生方。
ディスカッションの主な内容は日本の漫画市場と5ヵ国それぞれの漫画市場の違い。興味深かったのは、5ヵ国いずれの現代漫画市場も「日本の漫画の海賊版流通」から始まっていたということです。もう正々堂々と日本漫画の海賊版出版を目的とした会社ができ、許可を得るどころか作者名も入れず、原題とは違うタイトルを勝手に付けて売ってしまう。ところが、そんな海賊版が各国の子供達に漫画の存在を教え、彼らに漫画家を目指すきっかけを与えていたのだそうです。今日登壇した漫画家も全員子供の頃に「ドラえもん」「キャンディキャンディ」「あしたのジョー」といった古典から「北斗の拳」「ドラゴンボール」「幽遊白書」「スラムダンク」などジャンプ全盛期の作品の海賊版を読み漫画家を志したとのこと。
しかし、こうして漫画家が輩出され市場が形成された後も各国ごとに様々な事情により市場そのものの縮小・壊滅の危機を迎え、正直あまり良い環境ではないようです。例えば韓国では、独裁者として知られる朴正煕政権の時代に厳しい表現規制を喰らいます。対抗策として漫画業界は作品原稿を事前審査する独自組織を作りますが、結果的に自主規制のせいで児童向けの健全明朗な作品のみが追求されるようになってしまったとか。その後民主化に伴い韓国の漫画も多様化しましたが、未だに政府による規制は厳しく、さらにアジア通貨危機のあおりで多くの雑誌が廃刊してしまいました。韓国でこれなんだから中国本土は推して知るべしで、現代漫画成立時には既に政治プロパガンダの道具として使われていたという有様。台湾は比較的自由なのでは?と思うものの、やはり台湾政府も表現規制を行っており、そのせいで一時は台湾の漫画市場自体が壊滅状態になってしまったとのこと。復活後も、利益を最優先する台湾の出版業界が自国の漫画より日本・香港の漫画を優先的に出版したため国内市場が空洞化してしまいました。これらに比べれば香港はかなり自由に展開できていたようですが、2000年代にオンラインゲームの流行により漫画の販売部数が激減。現在安定した経営を続けているのは日本作品の版権を獲得し翻訳出版している企業という体たらく。一方マレーシアは、政権が云々、経済が云々の前に国教がイスラム教なので描けないものがてんこ盛り。例え少女漫画であってもキスシーンはNGだし女性の露出の多い服もダメ。基本的に漫画は「子供の教育のためのツール」として使われることが多いのだそうです。
あーめんどくせえ
これらの各国ごとの事情を知ると、つくづくコンテンツ産業というのは「表現規制」「経済危機」「趣味の変化」の影響をモロに受ける商売であることが分かります。規制ダメ!ゼッタイ!ちなみに上記のような理由から、各国では「原稿用紙に描いて実物の本として出版する」スタイルから脱却し、執筆から発表まで全てPC上で行うWebコミックに移行し、さらに国内市場ではなく海外市場を目指す若いアーティストが続出しているそうです。実際、今日登壇した各国の漫画家さん達も現在では全員デジタル作業に移行しており、今回の展覧会への出品のためにわざわざ新作を紙に描いてくれたのだそうです。なお、このディズカッションは図らずしも「ジェネレーションギャップ」が浮き彫りになる展開となり、日本の漫画家は全員PC作業ができず未だ紙の原稿用紙に描いており、海外の漫画家は全員デジタルという構図となりました。お互いがお互いの創作環境にビックリしていたのがなんだか面白かったです。
それにしても勿体無かったのは動員の少なさ!イベントの企画も内容も非常に素晴らしく、美術館だって築年数経ってる割には(バブル期のハコモノなんで…)メンテナンスが行き届いており良い状態、町に駅は無いもののシャトルバスでピストン輸送を行うなど交通面にも配慮しており、産官学連携も行っている…環境は申し分ないんですよ。ただお客さんが少な過ぎる。天気の良い日曜日だというのに、おそらく全日通しての動員数は150名未満といったところ。展覧会の入場料は大人500円/中高生300円/小学生200円/幼児無料なので、ゲストの先生方のギャラと交通費・宿泊費、その他経費を考えたら計算するまでもなく赤字なのは見てとれます。どれだけ少ないかって、先の土山しげる先生のまかないカレー限定100食がなかなか完売しないんですから。もう限定って言わなくていいよ!というレベル。そのうえパネルディスカッションに至っては「限定80名」と整理券配布までしていたのにその80席が埋まってないし。貴重な機会なんだから賑やかしの頭数揃えでもいいから市内の中学・高校の美術部員に招集かければよかったのに。実際子供達の良い勉強になったと思うんですよね。
まあ町民に限らず、ぶっちゃけ横手市民、というか秋田県民はマーケティングとプロモーション、及び商売が絶望的に下手です。もうちょっと商売っ気出して金にがめつくならないとこのご時世生き残れねえぞマジで。
展覧会に入場するともれなく超分厚い図録も貰えます。これだけ1300円くらいで販売してもいいほど豪華な作りになっており、なおさら「こりゃどう考えても元取れねえな」感が漂ってくるのです…