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memeoid 〜DANCE OF DEATH造型日記〜 フィギュア、特殊造型、特殊メイク、仮面、アクセサリーその他造型全般に関する製作記録。※画像・記事の無断使用及び転載禁止。

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江川悦子の特殊メイクアップの世界 異次元の扉が開かれる!


仙台市民図書館の蔵書は妙にマニアックなものが多く、司書のセンスと好みをマジで知りたいです。この「江川悦子の特殊メイクアップの世界 異次元の扉が開かれる!」は、日本における特殊メイクのパイオニア的存在である江川悦子さん著の特殊メイク解説本なんですが、普通これを自治体の図書館の蔵書に加えますか?まあ仙台はメイクアップ系の専門学校も複数あるから、学生さんが参考に借りるかもしれませんが、それにしたってマニアック過ぎます。そもそも司書がどこでこの本の存在を知ったのかも気になる…。ちなみに本書の出版社は「主婦の友社」!主婦の友が特殊メイクの本を出版するようになるとは誰が予想できたでしょうか?

江川悦子さんという方は、日活撮影所内にメイクアップディメンションズという特殊メイクの会社を設立し活動している方で、ありとあらゆるタイプの映画、ドラマ、CMの特殊メイクや特殊造型を手掛けられています。おそらく彼女の作品を全く見たことのない人なんて日本にはいないでしょう。そんあパイオニアの方が初歩的なものから本格的なものまでさまざまなタイプの特殊メイクの手法を解説しているのですが、上手いのは…


そう、基本的に解説しているのは仕上げのペイントのみで、特殊メイクのキモである「彫刻」にほとんど触れていないのです。彫刻して型取りしてアプライエンス(顔に貼る人口皮膚のピース)を複製しないとそもそも顔にメイクできないのに!




この精巧な猿のメイクだって、懇切丁寧に解説しているのはアプライエンスの貼り方とペイントの仕方、毛の貼り方のみで、彫刻や型取りに関する解説はページの上の方にちょっと掲載されているのみ。だからそれをまずやらないとメイクできないっつの!


もうこの宇宙人のメイクなんて…


「ちょっとやってみようかな?」という程度の人が真似するのはまず無理!目のパーツは塩ビ板のヒートプレスで作らないといけないし。

こうした「肝心な部分がすっぽ抜けている編集」はモノづくりを解説するHow to本にはよくあることです。そもそもこれをできるようにならないと始まらない、というところを敢えて書かないという。でも、それはモノづくりの大変さを門外漢に理解させるために敢えて必要な編集手法なのかもしれません。モノづくりをやっている人間として一番ウザいのは、付け焼刃の知識をかじっただけで「な~んだ思ったより簡単そう。やってみよ」と専門知識と技術をナメられることです。そんな奴らに安易に手を出させ「思ってたのと違う!難しいじゃねえか!」と思ってもらうことで、何かを作ることがいかに難しいか、技術を習得することがいかに困難な道かを実感させるというのはなかなかに上手い手と言えます。


とはいえ、本書は何気に読み物のページも面白く、特に権利関係で未だにソフト化が実現していない幻のホラー映画の傑作「スウィートホーム」についての記事が写真付きで掲載されているのは非常に貴重です。これ、スーパーバイザーを「特殊メイクの神」と言われているディック・スミスさんが担当しているんですよね。ここから日本のホラー映画における特殊メイクの歴史が始まったと言っても過言ではない作品なので、是非権利がクリアになって誰でも気軽に見れるようになって欲しいと思います。


巻末にある江川さんのキャリアの築き方についてのインタビュー記事は、特殊メイク関係なく、女性が一生できる仕事をいかに身に着け、生きていくかに興味のある人なら参考になる内容ではないでしょうか。考えてみれば、旦那さんの転勤のために一緒にアメリカに渡って、そこから英語を勉強して、特殊メイクの学校に通って、飛込営業でハリウッドの映画の現場に携わり、リック・ベイカーと知り合い、その間わずか6年ってムチャクチャ爆速のキャリア形成ですよ。

それにしてもこの本、主婦の友社発行ということは書店の何コーナーに並んでいるのでしょうね?もしかして女性誌コーナー?図書館では「映画」の棚にありましたが。

江川悦子の特殊メイクアップの世界―異次元の扉が開かれる!
江川悦子の特殊メイクアップの世界―異次元の扉が開かれる!

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