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memeoid 〜DANCE OF DEATH造型日記〜 フィギュア、特殊造型、特殊メイク、仮面、アクセサリーその他造型全般に関する製作記録。※画像・記事の無断使用及び転載禁止。

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かつて秋田県南には県央以上にアツい同人ムーヴメントが存在していた

昨日の記事の続きです。

今は見る影もない荒れ地となった秋田県の同人市場ですが、実は約20年前の私が中学・高校生だった頃、秋田県南には県央にも勝るほどのアツい同人ムーヴメントが存在していました。その中心地はY沢市。なぜ私がそれを知っているのか?それは私がドンピシャの時期に学校の美術部を根城に同人活動を行っていたからです。

私の中で一番古い同人イベントの記憶は、中学1年生の時に本屋で立ち読みした学研のアニメ雑誌「アニメディア」のイベント情報欄にY沢市で開催予定の同人誌即売会の概要が掲載されているのを見つけたことです。その時の驚きは大変なものでした。全国誌に秋田県の、それも近隣の街で行われるイベントが載るとは。さらに近隣で同人誌即売会が行われているという事実自体も衝撃でした。当時はまたインターネットが普及しておらず、イベント情報を得るのも、また同人誌の通販すらも専ら商業誌に頼っていた状態。そんな中、こんな貴重な情報を無駄にはできないと早速同じ美術部のヲタ友達を誘って見に行ってみました。まあフタを開ければ地元民の手作り感丸出しの小規模なイベントで出展サークルも20組程度だったのですが。しかし当時の我々にはそんな規模のイベントですら衝撃的でした。自分達の住む場所にサークルを立ち上げて同人誌を発行するだけのバイタリティを持つ人々が20組もあり、中には自分達と同じ中学生もいる。その一方で結婚して子育てをしながらコツコツと本を作る主婦もいれば、親と同居し且つ昼間仕事をしながら睡眠時間を削り活動している社会人もいる。こうした人々を一度に目の当たりにし、次に思うことは何か?

自分らもサークルやらねえ?

ということで友達とトントン拍子に話が転がり、「次のイベントにサークル参加しよう!」ということになりました。なお、このイベントに行って初めて知ったのですが、実はY沢市では以前より数ヶ月ごとに同じ会場で同人誌即売会が行われていたとのこと。前述のように当時はインターネットが無かったから、こうしたイベント情報は実際にイベントに出向いてチラシを貰ってくるよりほか手段がありませんでした。つくづくリアルな繋がりしか無い不便な時代だったんですよね。


会場となった建物は今でもあります。Googleストリートビュー便利だわー

当時の同人誌作りと言えば専らコピー誌でした。そもそも当時の秋田県にはオフセットで製本してくれる同人印刷屋なんか無かったし(この時点で既に他県に相当遅れを取っていた…)、ガキには数十冊の在庫を抱える度胸が無かったからです。せいぜいコピーで10冊前後作って様子を見る程度で、あとはコツコツグッズを作るとか。そのコピー誌すら「2人で作るのは大変だから他の人混ぜね?」という話になり、最終的に友達の「小学校の後輩でムチャクチャ絵の上手い奴がいるから誘おう」という案をそのまま受け入れ、小学生を巻き込んで同人誌を作るということをやらかしました。今ではとても考えられん…

1年後、学年は進み小学生だった彼らも中学に上がり、当然のごとく美術部に入部。今も昔も美術部はヲタの巣窟と化す部活です。さらに幸いなことに美術部の先輩達まで揃いも揃って皆ヲタだったため、Y沢市で同人誌即売会が開催されている情報に触発され彼らもサークル活動を本格始動させてしまいました。こうなるともはや美術部という名の漫研で、部活中にマンガやアニメ雑誌を回し読みする(美術部だと”資料”という名目が使える)、原稿を描く、本の構成を考えるなんてことは当たり前となり、その環境に触発されて本来ヲタでもなんでもなかった部員までがヲタに目覚め、さらに新たなサークルを作るという好循環が生まれました。後に他地域のサークルの人々に聞いたところ、他校の美術部も似たような状況になっていたそうで、当時の学校の美術部は言わば「同人ムーヴメントのインキュベーター」の役割を果たしていたのでしょう。これは高校に進学しても変わらず、むしろ高校の美術部は多地域からヲタが集結するもっと”濃い”場所となり、様々な市町村のヲタ達が画力を競い合い、それにヲタではない部員までが巻き込まれなし崩し的にヲタになってしまう魔窟と化していました。

なお、私の中学2年〜高校生の頃にY沢市の同人誌即売会イベントの開催状況は変化してきます。それまでは1組の主催者が数ヶ月おきに細々とイベントを開催していたのですが、イベント主催者自体が増えて違う種類の同人誌即売会が複数開催されるようになりました。それは時が経つに連れて加速していき、私が高校3年生になる頃には毎月何かしらの同人イベントがY沢市で開催されるほどに。とは言えクソ田舎過ぎてイベント会場に適した場所が無く、いつも上記の同じ場所だったのですが。このムーヴメントはやがて近隣地域にも飛び火し、「今度Y手市でも同人誌即売会が開催されるから出てみよう!」「○○で委託同人誌オンリーの即売会があるから見に行こう!」とまさに同人イベント百花撩乱状態になっていきました。もちろん同時期の秋田市でも同人誌即売会が、それも企業主催ではるかに大規模なイベントが定期的に開催されていましたが、その頻度自体は県南よりも少なかったのです。実際、「秋田市よりも県南の方がたくさんイベントがあるし売上もある」と言いわざわざ秋田市から県南に遠征してくるサークルも複数ありました。県北はどうか分かりませんが、当時の秋田県には…

県央:
企業主催で規模が大きく運営もしっかりしているがたまにしか開催されない同人イベント

県南:
個人主催で規模が小さく運営も手探りで設営作業すら出展サークル自らが協力してやるレベルだが開催回数が多い同人イベント

という2つの同人イベント市場が同居していました。おそらく秋田市でも個人の小規模なイベントは行われていたとは思いますが、それでも県央から来たサークルさん達は「県南ってなんでこんなに盛り上がっているんですか?」と不思議がっていたので、当時の県南は異常にアツかったのでしょう。

…しかし現在の秋田県にはそのアツさが1ミリも残っていません。昨日の記事でも書きましたが、県南はおろか県央でも同人イベントがまるで開催されていないのです。私が中学・高校の頃は90年代初期〜中期だったので、それ以降に何かがあったのでしょう。高校卒業後、進学のため上京して以来15年間ほとんど帰っていなかったので何があったのかは分かりません。秋田新幹線の開通で盛岡や仙台などもっと大きな市場のある他県の都市へ行きやすくなった、貧困が蔓延し同人誌を買う金も作る金も無くなったなどいくつかの理由は想像できます。しかし私が想像する最も深刻と思われる理由は「少子化」です。

秋田県は日本一早く少子高齢化が進んでいる自治体です。昔、私の住む町には小学校が4つありそれぞれを卒業した生徒が1つの中学校に集められました。そして高校受験で地域全体の生徒のシャッフルが行われ、それら節目節目で異なる背景を持ったヲタ同士の交流や競争が発生し、それがムーヴメントを産む土台となっていました。しかし現在、少子化により町内の3つの小学校が廃校になり1つの小学校を卒業した子供がそのまま中学に上がるという事実上の小中一貫校になっています。そこには新たな交流も刺激もなく、ただ小学校時の人間関係が続くだけです。高校も統合による廃校、科やクラス数の削減、女子校の共学化などの施策しても定員超えが難しく、一校あたりの生徒数は減る一方です。秋田県では毎年どこかの市町村で学校が消えています。このような状況ではムーヴメントを起こすどころかそのインキュベーターとなる学校の部活すら運営するのは困難でしょう。どんなコミュニティでも新たな血が入ってこなくなれば必ず滅びます。子供・若者がいないということはコミュニティの死を意味するのだと思います。

ちなみに「高校の美術部で顧問の先生に原稿の消しゴムかけとベタ塗りをさせた話」「その先生がこれまたヲタで学校にクトゥルフ神話のTRPGを持ってきたら美術部で流行って後輩がTRPGの同人誌を作った話」「上京直前に地元の町のまんが美術館で同人誌即売会を主催したら300人以上を動員して1日あたりの動員記録を作った話」など同人系のネタはもっといろいろあるのですが、全部書くと長くなるのでまた別の機会にしますw

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